上の絵は、若いころ、知り合いの女性を描いたものである。
絵を早く上手に描くにはどうすればよいかという事を意識し始めた頃に描いたものである。
その頃石膏デッサンを習っていたが、指導される先生の口癖が「絵は見て描くものではなく、覚えて描くものだ。」というもので、対象物に背を向けて後ろ向きに座って描かされた。この経験が、後々大変役に立つことになったのである。
「絵は見て描くもの」と思い込んでいる人の描き方は、何度も対象物を見ては紙に無数の細い線を引き、描いては消しを繰り返して時間ばかりかかっている。見ていると鶏がエサを食べているような忙し気な印象を受ける。なぜ、余計な線を描くのかというと、正確に形をとらえていないからである。「よく見て描く」という事は、対象物の全体を把握して覚え脳裏に刻んでから、どこから描くのかを決めてから描くのである。そのためにも全体の印象と比率を脳裏に刻む必要がある。絵を描くのはこの後である。具体的に一番良いお手本は、レオナルド・ダ・ヴィンのデッサンを見ればよい。
写実的に描く時、一番難しいのが人物画である。花鳥画や風景画は決まった比率というものはないが、基本的な構造線というものはある。
特にイラスト画の描きたいという人が、自分の描いたものを批評してほしいらしい。批評されるのは嫌だけれど、もっと上手に描きたいからであるという。批評されて腹が立つ人は、描いた作品を鏡に写して昼間の太陽の下で遠くから眺めることである。客観的に自分の描いた作品を見るのにこの方法はよく効く。
人物を描くのではなく、誰かの描いたイラストのような絵を描きたいという人は、最初から限界線をひいていてそれ以上にはなれないし、自分の個性も創作性も表現することが難しい。ましてAI以下のイラストしか描けない自分にますます落ち込み自信を失う結果となる。
ではどうすればよいか。
そのためには基礎勉強をするときには、まず、対象物をよく見て脳裏にその映像を刻み込むことから始めることである。敢えて映像と書いたのは、色んな方向から見て立体的の把握することが大切である。もしこれができると、すごく便利である。
初めは見た人物の印象的な姿が、目を閉じても脳裏に浮かぶようになれば第一段階をクリアしたことになる。この像が、くるくる動かせるようになれば第二段階に進んだという事であるが、これがなかなかクリアできない。その為にも対象物に対して自分の心が共鳴を起こさなくてはならない。初めのころは、印象深い人物を選ぶことである。私の場合はテレビで見ていたジャズシンガーの映像であった。夜、布団に入って何気なくジャズシンガーのことを考えていたら、その姿が浮かんできてくるくるゆっくり回り始めたのである。余りのことに感動して跳び起きてその絵を描いたが、大したこともなく普通であったが、コツがつかめたことが嬉しかった。その後、自分が感動したり印象深かった人の場合はこの現象が起こったが、それ以降はできる限り、見たものは覚えることにしている。
視覚記憶の程度はその日のバイオリスの良しあしに関係しているように思えてならない。
画像や映像は、頭の頭頂部から後ろの部分で起こっているような感覚を覚える。
近頃では、記憶の中から浮かんで来る印象深いものを作品に使っている。

一瞬の印象だけで描くとこのようになる。すれ違った人が振り向いた時、西洋人独特の顔に強い印象を受けたのである。その頃持ち歩いていた筆ペンで描いたものである。

これは、下の息子が通っていた保育園の先生で実にかわいらしく横顔にその良さが出ていたから、後日作品にしてみた。

この作品は、いとこの息子が結婚するのでそれを記念して製作したものである。
今から思い返すと、大変忙しくよくこんな時間があったものだと呆れるが、時間的には、超最速で描かれたものである。今見ると、実に印象的にその特徴を表現しているなあと感心してしまう。勿論この絵はお祝いに差し上げたのでデジタル画像しかないので残念である。
これらの絵はすべて練習のためにほとんどが100均の画用紙に描いたものである。中にはカレンダーの裏に描いたものもある。この頃は、まだまだだと思って練習のために時間を見つけてはこんな絵を描いていたのを思い出す。