「無断で解体作業が始まっていた建物」の続き。
会社と言っても、父がが経営していた商店であるが、父のこの建物に関しての取引は、私が結婚して家を出てからのことであるので立ち会ったことがない。しかし、実家に帰るたびに父は晩酌をしながら地主に関しての愚痴をくどくど話していたのをよく覚えている。
その内容は、「あの家は全部俺が金を払ったのに、地主は違うといって地代を払えと仕事場へやってきては客や従業員の前で言い続けた。それで根負けして地主にお金を払い会社の商品の倉庫として使っていた。弁護士に相談して話し合いをつけるつもりだ。」というものから、少し経つと「あの土地はやっと俺のものになる。正義は勝つ。」などと言って泣いていたのをよく覚えている。ガンで亡くなる直前には、「あの建物を使うときだけ地主の婆さんがうるさいから金を払ってやれ。使わないなら払う必要はない。」と言っていたのである。その時は何かよくわからないままに、いやいや愚痴に付き合っていたというのが事実であった。今にして思えば。もっと詳しく聴くべきだったと悔やまれる。後悔先に立たず。


今回の事件で法務局へ行って初めて知ったのは、「地上権の登記」ということと、「建造物の滅失登記」ということである。大事なのは書類だけで、書類さえ揃っていれば法務局は受けざるを得ないということであり、解体屋が建物を取り壊してしまうと地上権のない建物の権利はすべて消滅するということである。警察も法律に則って仲介の不動産会社が解体屋に依頼して作業をしていると言われれば止めることは出来ないということであった。事前に知らせようとしたが連絡が取れなかったというのが仲介会社の言い分であり、地主はこの建物は地代を払わないから返してもらったと主張する。
正義感の強い弁護士だけは「何としても告訴する。」と頑張っている。


法律の難しい知識のない父は、地上権とか登記といったことは専門家がすることだと思っていた。私自身絵描きバカでしかない。不動産売買のことをNETで読んでも一度ではわからず何度も読み直す。確信犯かどうかを実証しなければ法律に則っているとみなされるのであって、それを邪魔立てすれば業務妨害で反対に賠償を請求されることもあるという。壊れかけの建物を証拠として補強することもままならない。違法性があるという。中に転がっている父のものも勝手に取り出すのはまずいらしい。全ては仲介業者を通じて地主の許可をを取り付けねばならないのである。本当に「うっそー!」という感じ。誰がこんな法律を作ったのだ。


地上権の登記は地主がする義務がある。地主にお金を払っても地上権の登記をしてもらえなければ、弁護士を雇ってお金と時間をかけて裁判をやるしかない。知識もお金もなければ全ては払い損になる。父はどうもこのケースだったらしい。賢い金持ちや地主はますます金持ちになっていく。今の法律は地主を守るためだけにあるのかと思えてきた。親から受け継いだ左うちわの大地主と裸一貫で田舎から出てきて働き詰めだった父を比べるとやり%