地上げと一言に行っても色々ある。

普通の家は、自分の土地の上に自分の家が建っている。この場合の地上げは、小さな土地付きの家を買い上げてひとまとめにして広い土地に大きな建物を建てるための土地取得交渉である。

バブルの頃は土地買い上げの交渉に暴力団が介入して地上げに対して悪い印象が持たれるようになったが、今では暴力団の介入はできなくなっているのでそのような話も聞かなくなった。


問題なのは建物の所有者と土地の所有者が異なっている場合である。地主は建物の建っている土地だけを所有して借地代を建物の所有者から受け取っているのである。この場合建物の所有者には借地権が生じているので地主は簡単に立ち退きを主張することは出来ない。一方借地人の方も建物を売却する場合、地主の承諾を得なければならない。このように借地権のある建物が立っている地主の土地を地主の側から見て底地という。。
このような底地だけを買って地上げをすることは難しい。地主と建物の所有者の両方の承諾を得なくてはならないのであるから、交渉には時間も手間もかかる。NET上のこのような場合の交渉が出ているが大変だということがよく分かる。


もっと厄介ななのが、地上権付きの建物が底地の上に立っている場合で、地上権がついていると建物の所有者は地主の承諾がなくても自由に建物の売買もできるし建物を抵当に入れることもができる。もしこのような底地を持っている地主が小さな底地を一つにまとめて土地の価値を高めて売りたいと思った場合、そのハードルは高い。地主と借地人の間に信頼関係があればあればなんとかなるのかもしれないが、人間関係がこじれている場合、地主にとって頭の痛い問題である。このような場合、地主と借地人の間に立って問題解決に当たるのが、弁護士であったり地上げを得意とする不動産屋さんである。

このように見てくると、経験豊富な地上げ屋さんというのは、不動産業界の潤滑油のようなものである。地上げには時間もお金もかかるのが普通である。お店の看板に「地上げ専門店」なんて書いてあることはない。

大手のデベロッパー(土地開発業者)は、その地方の土地の不動産業者を地上げのために使うことがある。土地が手に入ると建物を作るためにゼネコンに発注をかける。開発の規模が小さいと地上げから建物の発注までを地域の不動産屋さんが携わることもある。このような開発が繰り返されて、気がつくといつの間にか街の景観が変わっているのに我々は驚くのである。

ただ、違法な地上げは犯罪である。違法な、もしくは脱法的な地上げを行う不動産業者は、誠実に地上げをしている不動産業者の足を引っ張っているのである。