野分とは台風の古称。二百十日の頃、野の草を吹き分ける強い風のことである。
上記の絵は随分以前に描いた『源氏物語』五十四帖の巻名のひとつ自作の「野分」である。


現在は日本列島の南東に台風18号が東北に進んでいる。
先週の火曜日、大雨の降った日、信号を慌てて渡り転んでしまって助け起こされた。全身びしょぬれになってへこんでしまった。野分ではなく「水分(みずわき)」である。


衛星写真もなかった平安時代は台風の予報なんかがあったのだろうか。ひたすら空を見上げて雲の様子を眺めて予知していたのかもしれない。海辺に暮らしている漁師さんなんかは雨の匂いが分かるという話である。大したものである。

色紙 〈重文 源氏物語絵色紙帖 野分〉 土佐光吉筆◆
土佐光吉 桃山時代 京都国立博物館蔵

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・ 野分 (源氏物語) – 『源氏物語』五十四帖の巻名のひとつ「野分」のあらすじ(WIKIPEDIAより)。
【光源氏36歳の秋の話】
『8月のある日、激しい野分(台風)が都を吹き荒れた。六条院の庭の草花も倒れ、そこへ訪れた夕霧は混乱の中で偶然紫の上の姿を垣間見、その美貌に衝撃を受ける。その後祖母大宮の元へ見舞いに参上してからも、爛漫の桜のような紫の上の艶姿は夕霧の脳裏に焼きついて消えなかった。
野分の去った翌日、源氏は夕霧を連れて、宿下がり中の秋好中宮を始めとする女君たちの見舞いに回った。玉鬘の元を訪れた時、こっそりと覗き見た夕霧は玉鬘の美しさに見とれると共に、親子とは思えない振舞いを見せる源氏に驚き不審に思う。とりどりに花のように美しい女性たちを思って心乱れつつ、雲居の雁へ文を送る夕霧だった。』

源氏物語の中のこの野分の巻は、台風という共通項があるからなのか特別に印象深い。野分と言う動的な激しい風の動きと夕霧の胸中が呼応していて見事である。
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自作の「野分」は、夕霧が紫の上を垣間見た心境をを敢えて印象風に描いてみたものである。

現在世界に吹き荒れているのはウクライナのロシアの4州併合問題である。もし、人類が少しでも賢くなっているのなら、このような暴挙は許されるはずはないということである。問題を起こした当自国のロシアが拒否権を発動することができるという国連規約自体がおかしい。このシステムを改めなければならない。その上、勝手に併合しておいて自国になったのだからここを攻撃された場合、自国が攻撃されたと見なし核攻撃をしてもよいとは何という国際規約であろうか。あきれてものが言えない。法を逆手に取るとはこのことである。